世界ラリー選手権（World Rally Championship）は、世界各国を転戦し年間16戦開催されるフォーミュラー１と並び称される、国際的なラリー選手権である。その中に、プロダクションカーのクラスがある。車両は、シトロエンやフォード、スバルといったワールドラリーカーとは異なり、より生産車に近いグループN仕様のインプレッサ、ランサーが主体である。

ラリー形態はWRC同等であり、ワールドラリーカーと同じステージを同じ日程で走破する。

今回のラリーアルゼンチンは、日本の正反対に位置する南緯32度、西経65度標高420ｍ近辺のコルドバを中心とし、延べ22箇所のスペシャルステージで行われた。ここ、アルゼンチンの路面は、舗装のように固い超硬質ダート、そして、轍の中に隠れるダンプのタイヤのような大きな石、はたまた、一抱えもあるような岩がゴロゴロした道、おまけに標高差も相当のものがある。

テインでは、シムスラリーチームの2台のインプレッサGDB、38号車 L・クザイ／M・シュゼパニヤック組と、45号車A・テイスコネン／M・テイスコネン組に、テインGr-Nダンパーを装着しサポートする。

A・テイスコネン／M・テイスコネン組は、昨シーズンテインGr-NダンパーでWRCフィンランドでGr.N優勝とラリーGBでP-WRC優勝を果たしている。今シーズンは更にインプルーブされたGr.Nダンパーでチャンピオンを狙っている。

コルドバの北、ラファルダの山間のコースでP-WRCクラス出場車両をメインとした合同テストが行われた。テインGr-Nダンパー装着の2台は順調にテストメニューをこなした。尚、今回よりテインGr-Nダンパーを装着したクザイ選手は「今までこんなサスペンションは使った事がない！車が別物のようだ！」と絶賛！

コルドバ市内の競技場に満員の観客が迎えたスーパースペシャルステージ。19時に1号車スタート、2台同時スタートで迫力満点のトライアルだ。ゴール後ラリーカーは、そのままパルクフェルメへと向かう。

この日のスペシャルステージは、どれも20km前後のWRCならではのロングな設定。クルー、車両、もちろんサスペンションにとってもタフなコースが待ち構えている。

この日、あろうことかテイスコネン車は、山岳路のストレートを走行中に突如サスペンションアームに原因不明のトラブルが発生し、右フロントから側壁にクラッシュしてしまった。敗者復活戦のスーパーラリーに向け修復を試みたが、ロールバーまで及んだ損傷が酷かったため、車両の安全確保ができないという理由から失格となった。

一方クザイ選手は、クラス1位に2分52秒差のクラス3位につけ順調なスタートを切った。

今日も20km前後のスペシャルステージが続く荒涼としたアルゼンチンの大地をアタックする。

クザイ車1台となったチームではあるが、リタイアしたテイスコネン選手も首を患いながらも、皆クザイ選手を応援している。

クルーもコースに慣れてきたせいか、好タイムを連発しトップを伺う。しかし、ここで焦ってはいけない。ラリーに限らずモータースポーツの鉄則の一つ「急いては事を仕損じる！」洋の東西を問わず結果を出す為には焦ってはいけない。

レグ2では、トップの脱落もありクラス2位まで来た。タイム差は1分を切っている。

最終日となり、最後のスパートを掛けたい所だが、急な登りと下りのガレ場が本日のステージである。誰もが餌食になりかねない難所、「エル・コンドル」が待っている。

そんな難コースもクザイ選手はステディーに走りきり、無事P-WRC2位の座をゲットした！

ゴール後のサービスに戻ってきたクザイ選手は、シャンパンを片手に「テイン！素晴らしいサスペンションをありがとう！」と嬉しい言葉をかけてくれた。