2006年のWRCシーズンも漸く半ばを過ぎ、今回の舞台は待望のラリージャパンである。
ラリージャパンは、北海道帯広市を中心とし、陸別、足寄、新得の山裾のステージに27箇所のスペシャルステージを設定。ステージ長も最短は、スーパースペシャルステージ帯広の1.3km、最長は、陸別のSS4/8プライの34.96kmとWRC(世界ラリー選手権)ならではのスケールで行われる。当然、海外の有力チームのシトロエンやフォード、プジョー、スバルといったWRカーが日本の一般道を走るため、ラリーファンならずとも、一見の価値があろう。
今回テインがサポートする車両は、P-WRCで3台。おなじみ、シムスラリーチームの2台のインプレッサGDB、38号車 レシェック・クザイ/マシェック・シュチェパニャック組と、45号車アキ・テイスコネン/ミカ・テイスコネン組。そして、チームクオシスより、41号車の鎌田 卓麻/デニス・ジロウデである。 そして、国内のプライベーター、CT9Aの鎌田恭輔/鎌田千絵子、渡部洋三/池田茂はType HG、田口盛一郎/廣田幸子、三好秀昌/市野諮はType Gr.N、M301Sの原宴司/原聡子はType HGを装着しての参戦である。
8月28日(月) P-WRC合同テスト
この日は、朝から陸別近郊でP-WRCの合同テストが行われた。約3.6kmのステージは、森の中のワインディングで、砂利まじりの赤土の中には、鋭利な石塊が埋まっている。
テイスコネン車は順調にテストをこなし、今回より新仕様となったテインGr.Nダンパーのセットアップを進めて行った。一方クザイ車は、ドライバーのクザイ氏が日本国内のライセンス取得に手間取ったあげく、結局テストを行うことができなかった。そして、鎌田車は、サスペンションのマイナートラブルに見舞われたものの、ラリー本番に向けたセットアップを見つける事ができた。
また、プライベーターの各選手同士も独自の合同テストに参加し車両のセットアップを進めていった。
8月31日(木) セレモニアルスタート
WRCならではのセレモニアルスタートは、帯広市内中心部の商店街を封鎖し、沿道には公式発表で5万6千人もの観客を集め行われた。日中断続的に降り続いた雨も、スタートの19:30にはすっかり上がった。
いよいよ、ラリージャパンが始まる!
9月1日(金) レグ1(SS1〜10)
今日のステージは、陸別近郊の各ステージを午前と午後の2回走る。ステージ名は、パウセカムイ(SS1、5)、陸別オフロードランド(SS2、6)、カンナ(SS3、7)プライ(SS4、8)、帯広スーパースペシャル(SS9、10)である。中でもプライは、ステージ長34.96kmと今回の最長である。
朝から良く晴れてはいたものの、ステージ内は昨日までの雨で非常に滑り易いだけでなく、2回目のアタックでは、深い轍を作っている。
トップの奴田原車以外は、皆、その足元を確かめるように慎重に走っていた。そんな中、地元北海道の鎌田車は、原因不明の操縦性悪化に悩まされたあげく、コースオフしかけてリアのコントロールアームを曲げてしまった。ところが、トラブルはこれだけではなく最終サービスではフロントデフが壊れたため、トランスミッションの交換まで行い、ついでに、これまでの悪い流れをリセットするためにサスペンションも交換した。この日は、P-WRCクラス7位である。
クザイ車、テイスコネン車は、共にサービス毎にセットアップを煮詰め、P-WRCクラス3位、6位でレグ1を終えた。クザイ車は、テストもなく初のラリージャパンであるが、これをビギナーズラックと呼ぶのだろうか。
国内プライベーターではこの日Gr.N装着の田口組が総合22位、HG装着の鎌田(恭)組が23位とプライベーターとしては上位に食い込んだ。Gr.N装着の三好組はクラッチのトラブルに見舞われレグ2からスーパーラリーでの出走となった。
9月2日(土)レグ2(SS11〜21)
レグ2に入ってからは、パンクに見舞われるクルーが続出した。そのたびに順位が入れ替わり、混沌とした状況になっている。
レグ2の鎌田車は、不運続きであった。あろうことか、リアのコントロールアームを止めているボルトが脱落し、走行不能となってしまったのだ。そのため、一度リタイアし、スーパーラリーという復活制度でレグ3から心機一転出直す事となった。このスーパーラリーという制度はリタイアの救済であり、そのためのサービス時間も2時間45分あり、かなりのダメージでも修復できるようなシステムになっている。
鎌田車は、壊れた足回りの交換は勿論のこと、当初から続いている原因不明の操縦性悪化について、執拗に調べた。
シムスチームの2台は、パンクの影響で順位が入れ替わり、テイスコネン車が5位、クザイ車が6位だった。期待のテイスコネンは、まだまだスピードが足りない。セットアップは悪くないはずだが、、、。
一方国内プライベーターではベテラン田口組が順調に走行。総合順位でも20位と海外勢に迫る勢いを見せた。また全日本ダートトライアルチャンピオン地元の原組もレグ1でコースアウトしスーパーラリーとなったがこの日は同じくBOONに乗るライバル伊藤組を追い上げる猛追をみせた。不運だったのはラリージャパンでは常連の渡部組、レグ1のトラブルを乗り切り本領発揮かと思われた矢先にタービンにトラブル発生。またこれまで順調に走行していた鎌田(恭)組もSS18でコースアウトし、両選手ともにスーパーラリー組に回ってしまった。
9月3日(日)レグ3(SS22〜27)
最終日となり、漸くまともに走れるようになった鎌田車であったが、今度はロングのステージでブレーキが悲鳴を上げた。24.88kmのSS24、26=ペンケでは、残り8km付近からブレーキペダルが床まで届き、いつもの左足ブレーキングを使えないばかりか、クールダウンのためのペースダウンまで余儀なくされた。
一方、テイスコネン、クザイの2台は、最後の追い上げでペースアップを図るが、揃って橋の欄干にリアをぶつけ、昨日の順位を超えることができなかった。
しかし、最終SSのひとつ前のSSペンケ2で、トップを走っていたラトバラ車がコースアウトリタイア。
結果的に順位がひとつ上がった。
プライベーターでこれまでほぼトラブルフリーで走ってきた田口組を、SS24バーストが襲う。このバーストはタイヤ交換で乗り切ったがそこからドライビングのリズムを崩してしまう。狂ったリズムは150Km/hからのブレーキングを一瞬遅らせコースアウト。午後のセクションを残してリタイヤとなる。
モータースポーツは、本当に最後の最後まで判らない。 |